ケアの質を高める!PDCA推進術
ICT導入でより良い支援に貢献
科学的介護が推進されるなか、あらためて問われるのがケアの質向上をめざすPDCAサイクルの回し方。今回はICT導入について、「株式会社礎」の事例から、そのあり方を考えます。
ipad配布を契機にICT化を推進
埼玉県越谷市を拠点に、デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援事業などを展開する株式会社礎。ICT化に乗り出したのは、2011年に幹部職員やケアマネジャーにipadを配布し、在宅ワークが可能な環境を整備したことがはじまりでした。
背景にあったのは、もともとケアマネジャー出身だった代表取締役の大塚洋幸さんが、ケアマネジャーという仕事の業務効率を高め、存在意義の確立を図るためだったといいます。
「ケアマネジャーは常に相手ありきの職種のため、動きが流動的で非効率な場面が数多いことを課題に感じていました。ここを解決すれば、子育て中の女性など働きたくても働くことのままならない人たちも含め、ケアマネジャーとしての業務を全うできると確信し、在宅ワークの環境を整備しました」
この試みが奏功したことをきっかけに、同社ではICT化を全社をあげて推進。15年に開設したサ高住にベッドセンサーやカメラ付きナースコールなどを設置し、これらを一つのデバイスで管理できるシステムをベンダーと共同で開発しました。スタッフ間の迅速な情報共有ツールとして、クラウド型ビジネスチャットツール「Chatwork Live」も導入し、緊密でスピーディな情報共有に努めています。
インフラの一つとして浸透
さらなる新ソフトを開発中
「もはや当社にとってICTは重要なインフラの一つです」と話す大塚さん。ICT化に惹かれて求人に応募してきたり、やむを得ない理由で退社した人材が再び同社で働きたいと戻ってくるケースも多いといいます。
課題は、数多あるソフトウェアをいかに一元化できるかという点。「社内においてはある程度の一元化はできていますが、それでも排せつセンサーなど連携しきれないものはあります。あくまで目的は、一人の利用者さんのより良い支援。それを念頭に置いたケアの実践に役立てられるものにしたいと考えています」
そうした課題を受け、経済産業省の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の採択によって、利用者情報の一元化と請求関係が一気通貫で管理できるソフトの開発を進めているとか。
「ますます少子高齢化が進行して支援の手が必要とされるなか、プラットフォームの見直しは不可欠だと痛感しています。ICTはそこで大きなカギとなります。変化に対応し、地域に求められる存在であり続けたいですね」
株式会社礎が導入するICT
情報共有
・インカム
・クラウド型ビジネスチャットツール「Chatwork Live」
見守りシステム
・無線式コールシステム「ココヘルパ」(ジーコム株式会社)
・睡眠見守りセンサー「まもる〜の」(株式会社ZIPCARE)
・マット型センサー「aams」(株式会社バイオシルバー)
クラウド型ビジネスチャットツール「Chatwork Live」導入のPDCA
利用者や事業所、プロジェクトなどのグループを作成し、活発な情報共有を行っている。
①Plan(けいかく)
導入の際には、ICTを重視する介護報酬改定の方向性や方針への理解を図るとともに、”利便性”をスタッフに訴えかけた。
②Do(じっこう)
まずは管理者から活用を促進し、続けて現場スタッフにも浸透を図っていった。利用者のその日の健康状態やケアの進捗状況、事例検討などを実施。
③Check(ひょうか)
情報共有が必要と思われる動きが生じた際は、その都度、協議してグループを作成。現在100近くのグループがある。
④Action(かいぜん)
他法人を含めた入退所があるなか、注視が必要となる利用者においては、他法人の担当者にもChatworkへの参加を呼びかけるなど、ケアの質向上を図っている。
そのほか
・見守り機器導入に際しては、各メーカーの担当者による施設管理者向けの説明会を開催。
同時に、ICTに興味のあるスタッフを担当者に抜擢し、活用を促進している。
・日常のケアにおいては、業務負担の軽減とケアの質向上を実践。看取り期においては
「aams」も使って、リアルタイムで心拍数や呼吸数などを確認することで、状態変化にも 迅速な対応を可能にしている。