第5回 医療介護をささえる人たち
介護・医療分野でいきいきと働く人をご紹介します。
コロナ禍で増える人と人との行き違い
「組織は人づくりから、人を活かす経営」「労務トラブルは『対処』から『予防』の時代」――。
これは、介護事業所などのコンサルティング業務に力を注ぐ社会保険労務士の倉雅彦さんが掲げるスローガンです。
「病気は重症化したら医師に頼りますが、労務問題も深刻になれば弁護士の力が必要になります。そうなる前段階に、研修等で知識やスキルを高めてトラブルを予防するお手伝いをするのが私の役割です」
研修は、ハラスメントやメンタルヘルス、コミュニケーションなどをテーマに、ツールを用いて可視化に取り組むのが倉さん流。取り入れているのは、自分や相手の長所を知る「持ち味カード」、認める方法論やノウハウを身に付ける「承認カード」といったユニークなカードです。
またコロナ禍を経て、職場風土の改善を目指す「はたらきねこポスター」も独自に作成。「見直そう日頃の言動相手の気持ち」「あいさつは心のドアをノックするもの」といった平易な言葉と可愛らしい猫のキャラクターで、啓発を行っています。
「コロナ禍で飲みにケーションがなくなったこともあり、本音を語れる場がなくなって他者と行き違いが生じるケースが増えています。自らの立ち居振る舞いを省みて改善する努力をしなければ、職場は疲弊するうえ人材も定着しません。あらためて研修や掲示物で注意を喚起することが必要だと痛感しています」
教育の大切さを痛感し人を育てる社労士へ
郵便局員から福祉用具貸与を行う会社に転職し、ケアマネジャーとして福祉業界に携わることになった倉さん。しかし、仲間の福祉関係者が精神的に追い詰められていくケースを多く目にしたことで社会保険労務士の仕事に興味を抱き、取得を決意。3度の試験を経て合格し、晴れて社会保険労務士としてスタートを切りました。
手続き代行や書類作成といった業務を通じてさまざまな労務問題に直面するなか、湧いてきた思いは教育の大切さ。「ケアマネジャーなのに職場のマネジメントが上手くやれない人が多くいるなど、もっと視野を広く、互いを理解することが求められると思いました」
前述のカードと出会ったこともあり、研修に重きを置く方針へシフトし、現在のスタイルが確立されたといいます。
新たなニーズに応え介護事業者を支える
2023年に入って、企業の担当者に代わってハラスメントの相談を請け負う「従業員のためのなんでもハラスメント相談窓口」をはじめ、A4サイズの紙1枚で人事評価が可能なコーチング「A41枚評価制度」など、新たなサービスを開始した倉さん。本腰を入れて職場環境の改善を図るとともに生産性を向上し、より良い人材育成に取り組んでほしいと呼びかけます。
「介護事業者が自施設にマッチした人材を採用し、長く働いてもらえる環境づくりができるようなサポートに励みたいですね」
新たなニーズに応え介護事業者を支える
Q 人材がなかなか育たず、優秀な人が辞めてしまいます。どうしたらよろしいでしょうか。
A 正しく評価をすることが大切です。
人は正しく評価をされなければ、モチベーションがどんどん下がってしまう生き物です。そもそも、自分に与えられた役割を理解していなければ、何をどう頑張ったらよいのかもわからないのではないでしょうか。正しく評価されれば人は頑張り、それが会社の成長につながります。
そのためには、役割やスキル、業務態度に応じた役割等級を明確化し、それに基づいた目標を明示すること、それらと連携した賃金体系を設定することが必要となります。
INFORMATION
社会保険労務士事務所テラス
011-299-8210
北海道札幌市北区10条西1丁目10-1 MCビル7F