第4回 医療介護をささえる人たち

第4回 医療介護をささえる人たち

介護・医療分野でいきいきと働く人をご紹介します。

訪問リハビリを強みに幅広い患者層に対応

2023年2月1日、札幌市内に開院したホームケアクリニック麻生。旭川で消化器内科医として研鑽を積んできた井尻学見さんを院長に、医師がもう一人、そのほか看護師やセラピスト、医療ソーシャルワーカーらで、在宅で療養する患者を支えています。
患者層は、消化器疾患をはじめがん終末期、神経難病など幅広く、在宅人工呼吸器や点滴、医療用麻薬といった医療依存度の高い患者にも対応。「基本的には、軽度の疾患の方から重度者まで、どんな医療度でも受け入れる方針です」と井尻院長は説明します。開院から2カ月ですが、すでに看取り支援も 20人を超えており、着実に地域からの信頼を積み重ねています。
同院が力を入れるのは、理学療法士と作業療法士による訪問リハビリテーションです。「在宅に帰ってくる方は、リハビリは不可欠だと考えています。自分らしい生活をおくるためには、体力をつけなくてはなりません」とリハビリの重要性を説く井尻院長。その一方で、リハビリは二の次と考える患者は少なくなく、啓発活動の必要性を感じているといいます。

海外で迎えたパンデミック、医師人生を見つめ直す

大学を卒業し、臨床と研究の二足のわらじを続けていた井尻院長。18年に渡米し、カリフォルニア大学で研究者として過ごしていた頃、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験しました。感染して入院を余儀なくされ、家族と会うこともなく最期を迎える人々の姿に直面し、自分ならばどうしたいかと考えたそうです。
「やはり最期も生活する場で迎えたい。日本に戻ったら在宅医療に携わろう」。
そう心を決めた井尻院長は旭川に戻り、総合病院で緩和ケアチームの一員として往診にも勤しみ、実績を積んだ後、開院に漕ぎつけました。
理念は「人に感謝し、人を尊敬し、人を尊重し、『人とつながり、人と生きて』ゆきます」と掲げました。これは、在宅医療における財産は、それにかかわる“すべての人〟であるとの考えにもとづくもの。それぞれが専門性を発揮し、互いの職種はもちろん人格をも尊重する組織でありたいという思いを込めました。
また長い人生において、まずは家族、そして自分自身を最優先にしてほしいというのが井尻院長の考え。そこの安定があってはじめて仕事へのパフォーマンスが発揮できると感じているそうです。

多業種とつながって人材育成や海外展開を構想

目下、取り組むべきはクリニックの経営を軌道に乗せ、安定した在宅医療を提供すること。
井尻院長は、「もちろん在宅医療は、万能ではありません。でも医療を受ける選択肢が複数あって、患者さん自ら選ぶことができるのは、自分らしい人生を送るうえで大切なこと。もっと住民に伝えていきたい」と話します。
そうしてある程度の基盤が整ったあかつきに思い描くのは、在宅医療から広がる新しい地域の姿です。
「少子高齢化が進行する日本だからこそ、医療の枠にとどまらずに多業種とつながり、今までにないサービスを生み出せればと思っています。人材育成や海外展開など、新しい価値を生み出していけるような活動をしたいですね」

井尻 学見さん

今回お話を聞いた方

井尻 学見さん

ホームケアクリニック麻生 院長

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北海道札幌市北区北38条西4丁目2-30 ノールアイビス1F

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