第九回 広がれ!心のバリアフリー

第9回 広がれ!心のバリアフリー

マイノリティを輝かせる
障害の種類や有無の垣根を越えて

知ることからはじまる心のバリアフリー

障害のことが理解されると、他のマイノリティへの理解も進むと言われています。自身が視覚障害当事者だからこそ、障害を切り口に心のバリアフリーを広める活動をしてきました。障害への理解を進めるには、障害への知識と当事者と関わる機会が必要です。そこで、飲食店やオンラインで、イベントを通して障害について知ったり交流をしたりする機会をつくってきました。
活動の最中、私と同じ志をもつ美容師の方と出会い、2023年5月21日に心のバリアフリーを進められるショーイベント「広がれ!心のバリアフリーin札幌パラコレクション」を開催しました。
障害を含むマイノリティを実感している方と理解やサポートをしたいという方が、おしゃれを通して交流を楽しむことができる内容です。障害当事者やLGBTQについて発信したい方、子どもから高齢者まで、障害種や障害の有無の垣根を越えて総勢20組のモデルがランウェイを彩りました。
開催前から、100名の観客席は予約で満席となり、キャンセルを待つ方が何人もいる状態でした。ランウェイを歩く際に、当事者からのメッセージが読み上げられます。また、衣装やパフォーマンスによる演出で自分たちの伝えたいことをさらに色濃く表現することができます。その姿を見て、マイノリティを感じられるイベントにしたいという願いが叶いました。
おしゃれというポップな分野と融合させることで、来場者が楽しみながら様々なマイノリティを知る機会になるように企画しました。心のバリアフリーは、知ることからはじまります。

知ることからはじまる心のバリアフリー

対話をすることで深まる心のバリアフリー

20組のモデルは、障害の有無や種類、年齢や性別を問わず募集しました。美容師、着付け師は、障害に関わったことのある方にご協力をお願いしました。ボランティアは公募し、障害当事者や福祉関係者、障害について知りたいという方まで、道内外問わず多くの方にお力添えをいただきました。また、地域の学校と連携し、美容師を目指す学生や照明・音響の技術者を目指す学生の皆様にも関わっていただきました。
心のバリアフリーを深めるには、障害を含む様々な事情を抱えている方と接し、コミュニケ―ションを図ることが必要不可欠です。イベント関係者を対象に、オンラインで交流会を複数回設定し、事前に関われる機会をつくりました。また、サポートの方法や対話の大切さを考えることができるミニ講座も聴講していただきました。
当日は、ショーの開始前の準備から開催後の打ち上げまで、対話を大切にして交流をするシーンが多く見受けられました。
知ろうとする気持ちと、伝えたいという気持ちが交わり対話をすることで、心のバリアフリーが深まります。

対話をすることで深まる心のバリアフリー

当事者が表現し発信する意味

それぞれが抱えているマイノリティは、個人で異なります。例えば、視覚障害。視覚障害者には全く見えない全盲や少しは見える弱視がいます。弱視も一人一人見え方が違います。また、先天性か後天性なのか、サポート体制や経験によって配慮を必要とする内容や程度も変わります。視覚障害者が困ることやサポートを必要とする場面の傾向はありますが、自身の事情は本人が発信をしないかぎり本当の意味で理解することはできません。だからこそ、当事者が表現し発信することが大切になります。
このイベントは、自らマイノリティについて発信してみたいと思っている方に多く参加していただきました。それぞれの思いを、おしゃれと共にランウェイから会場の皆様に届けられるのがこのイベントの醍醐味の一つです。

当事者が表現し発信する意味

今はカタチにする必要がある

私が人生をかけて広めている障害理解(心のバリアフリー)は、一人一人の心に届けて社会に広める活動です。障害をはじめマイノリティは、その人の一部分として存在し、その人の事情として受け止め合えることで、自分も周囲の人もやわらかくて優しい気持ちで過ごしていけます。私も障害を理由に、理解を得ることが難しく、考え込むことが小さい頃からありました。心がギューっとなり苦しくなります。
理解が滞ってしまう理由は、知る機会が少ないからです。知らないがゆえにどうしたらよいかわからず遠ざけたくなったり、誤解をしてしまったり。知ることができると、思っていたよりも深刻なことではなかったと感じられます。だからこそ、知る機会を様々な方法でつくってきました。
今はまだ、心のバリアフリーをカタチにして理解を広める必要があるのが、この社会の現状です。
将来はイベントのタイトルに「心のバリアフリー」と表現しなくても、自然に一人一人の事情を受けとめあえる社会になって欲しいです。その実現に向けて、私にできることに全力を尽くします!
このイベントは、来年も開催します。ぜひ、多くの方に会場の観客席からご参加いただき、発信者の思いを肌で感じて欲しいです。他にも、モデルやボランティア、技術者などのイベント関係者として関わり、さらに心のバリアフリーを進める機会に繋がればと思っています。

今はカタチにする必要がある

いつでも心のバリアフリーを進められる

「広がれ!心のバリアフリーin札幌パラコレクション」の様子は、遠方の方や会場に行けない方も参加ができるようにYouTube「梢の心になるほど隊」でライブ配信を行いました。アーカイブでいつでも視聴することができます。ぜひ、この記事を読んでイベントの存在を知った方は、動画を視聴していただき、心のバリアフリーを進めるきっかけにして欲しいと願っています。

いつでも心のバリアフリーを進められる

動画で配信する目的

障害の理解(心のバリアフリー)が進むと、高齢者や様々な事情を抱えている方たちへの理解も進むと言われています。しかし、障害について知る機会が不足していると、心のバリアフリー化は進みません。そこで、誰もが手軽に知ることができる、動画での配信にも力を入れいます。
YouTubeのチャンネル名『梢の心になるほど隊』は、障害について自然と詳しくなれる動画を楽しくポップな内容で投稿しています。動画投稿以外にも、ライブ配信でマイノリティについて視聴者の経験談をご紹介したり、考えをシェアして交流をしたりする取り組みも展開しています。

動画で配信する目的

TikTok『こずえのピンぼけライフ0.09Ma』
TikTok『こずえのピンぼけライフ0.09Ma』は、主に私の視覚障害あるあるの動画を投稿しています。発達障害や精神障害など、他障害の当事者のあるあるも募集し、生の声を投稿しています。ぜひ、ご視聴ください。
TikTokで『こずえ』と入力して検索するとご覧になれます

杉本 梢さん

今回お話を聞いた方

杉本 梢さん

Lululima branch代表

ルールリマブランチは、正しく障がいを知る機会をあらゆるスタイルでご用意しております。HPはこちら:https://lululima-branch.com/

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