地域団体が手を携え多世代交流の場を創出

買い物難民や居場所として親しまれる市場

奇数月の最終日曜日、社会福祉法人足立邦栄会特別養護老人ホームさくら・障害者支援施設かえでの軒先に溢れるのは、「いらっしゃいませ」と呼びかける声や楽しそうに交わされるおしゃべり。ズラリと並ぶ野菜や雑貨を選んだり、キッチンカーでグルメを味わったりと思い思いに楽しむ老若男女の参加者もいれば、絵本の読み聞かせをはじめ射的やボッチャなどで遊ぶ子どもたちもいて、笑顔あふれる空間が広がっています。
「谷在家さくらマルシェ」は、2021年7月からさまざまな団体が協力しあって開催しているもので、毎回約400人もの多世代の地域住民が集う人気のイベントとなっています。
開催のきっかけとなったのは、子どもの食支援を行うNPO団体「がるまる」を主宰する宮本明彦さんと、一般社団法人子ども食堂支援協議会が行っていた野菜販売会が出発点。マルシェと同じ場所を借りてはじめたことが、発展して今の形になったそうです。
「この地域はあまり買い物するのに利便性が良いとは言えず、〝買い物難民〟の高齢者もいます。地域住民のお役に立ちたいと考えついたのが、マルシェの開催でした」と宮本さん。
足立邦栄会の新井五輪子理事長は、「特に高齢者にとっては、買い物ができるだけではなく、マルシェに来ればお友達に会えることも楽しみのひとつになっているようです。居場所づくりの役割も果たしていると感じています」

地域活動を担うランドマークチームを発足

足立邦栄会では、このような地域活動を担う専門部門「ランドマークチーム」を法人内に発足しています。「〝地域のランドマーク〟となることを目的に掲げ、足立区以外にも府中市、狛江市の3つの地域で地域活動を展開しています」とチームリーダーの六笠良 一 さんは説明します。その活動は、カフェ運営や子どもの職場体験、清掃活動など多岐に渡ります。
こうした地域活動は住民だけでなく、職員のやりがいにもなっていると、本部情報マーケティング部長の野崎建治郎さんは話します。「入所職員は地域の方と触れ合う機会はなかなかありません。でもマルシェに出ることによって、視野も広がりますし、地域のなかで存在する自分たちの仕事の意義のようなものを感じられる機会になっていると思います」
コロナ禍ではじまったマルシェももう16回目。「これからも明るく、楽しく、無理をしないスタンスで続けていきたいですね」（宮本さん）

前列左から足立区地域包括支援センター鹿浜の堀越美惠さん、足立区鹿浜地域学習センター
図書館の富岡さん、後列左からこども食堂支援協議会の鈴木康一さん、関光治さん、野崎さん

こども食堂支援協議会

当協議会としては、①地元の市場から仕入れた新鮮野菜を販売し、売上を子ども食堂の運営団体に寄付する「こども食堂応援即売会」、②朝食を食べることのできない子どもに朝ご飯を提供する「小中学生朝食プロジェクト」、③生活困窮者やひとり親家庭などに食品を無償提供する「思いやり冷蔵庫事業」を行っています。
マルシェには近隣の中学校の生徒もボランティアとして手伝ってくれています。こうやって交流ができるのは貴重な体験になっています（代表理事・鈴木康一さん、相談役・関光治さん）。

新鮮野菜や果物が販売されている

社会福祉法人足立邦栄会

2019年からの5カ年計画のなかで、地域貢献を担う部門として立ち上がったランドマークチーム。3つの地域あわせて10人のメンバーで精力的に活動しています。足立区ではこれからの担い手の育成にも力を入れています。
（足立区地域包括支援センター鹿浜センター長・堀越美惠さん）

ランドマークチームのメンバー

がるまる

2017年から足立区を拠点に子ども食堂をはじめました。コロナ禍を経て、食材を配布するフードパントリーも行っています。
マルシェには、90歳くらいのおばあちゃんも参加していますが、来るときは杖をついてくるのに、返りには戦利品を手に杖を忘れて帰るなんてことも（笑）
ここで利用者の安否確認を兼ねているケアマネジャーさんもいます（笑）（宮本明彦さん）

会場では介護相談も受け付けている

足立区鹿浜地区学習センター・図書館

図書館に足を運べない方にもサービスを届けたいと参加しています。マルシェでは、キッズ・ベビーコーナーで絵本や紙芝居の読み聞かせを行っていますが、毎回50人ほどの参加者に集まっていただいています。
毎回心がけているのは、出来る限り参加者の皆さんが楽しめる場にしたいということ。反省会を通じて意見を出し合って、より良いひとときをつくれたらうれしいですね（館長 冨岡茜さん）。

室内で読み聞かせやボッチャを楽しむ子どもたち