ケアの質を高める!PDCA推進術
排せつパターンの分析で個別ケアを目指す
科学的介護が推進されるなか、あらためて問われるのがケアの質向上をめざすPDCAサイクルの回し方。今回は排せつケアについて、「特別養護老人ホーム朋松苑」の事例から、そのあり方を考えます。
適切なケアを提供するスケジュールを作成
どの介護施設にとっても、排せつの個別ケアは大きな課題です。船橋市特別養護老人ホーム朋松苑では、ある程度の排せつパターンの予測にもとづくケアのスケジュールを組み立てることで、個別ケアの実践を目指しています。
排せつパターンの予測に役立てているのが、マットレス上に敷くセンサーで尿や便をにおいで検知し、おむつ交換の適切なタイミングを知らせる『helppad』(株式会社aba製)です。これは排せつ記録をデータ化し、排せつパターン表が自動生成もされる優れもの。同施設では、2019年に2台導入し、試行錯誤しながらベストの使い方を確立しています。
2台のうち1台は、おむつを装着する新規入所者に対し、約1カ月間使用して排せつ量や時間帯を記録しています。ユニットリーダーの鈴木雅未さんは、「排せつ記録のグラフを参考に情報を収集し、1回目のケアから次の排せつまでの時間設定をユニット内で検討します。次に仮説をもとに実行し、繰り返し調整を図り、適切なタイミングを探っていく方法です」と説明します。
もう1台は、失禁が多い、あるいは皮膚トラブルなど何らかの課題を抱えている人への使用。これも新規入所者と同様に分析を繰り返し、タイミングを見極めています。
これを経て、原則1日5回に設定している排せつケアのなかで、その人に出来る限り即したケアのスケジュールを作成するというわけです。
システム活用によって職員の意識が変わった
こうした試みによって、着実に皮膚トラブルや失禁するケースは減少しているそうです。「入所者さんのQOLの維持はもちろん、失禁などによる着替えや処理が減り、業務負担も軽減されていると思います」とケアマネジャーの斉藤崇紀さん。
何よりも、これが職員の排せつケアの意識を向上させるきっかけにもなっているのは大きな成果です。「システムを使っていない入所者さんに対しても、排尿量に対するおむつのサイズが合っているか、ケアの時間帯は適切であるかを意識できるようになりました。より多くの入所者さんに個別の排せつケアを実践していきたいですね」(鈴木さん)
今回お話を聞いた方
ケアマネージャー
斉藤 崇紀さん
今回お話を聞いた方
ユニットリーダー
鈴木 雅未さん
ケアの質を高めるPDCA
Plan(計画)
排せつケアシステムを活用し、排せつパターンを分析。グラフをもとに、その人に合ったケアの時間帯やおむつの種類を検討する。
Do(実行)
排せつケアのスケジュールを作成し、それにもとづくケアを試してみる。おむつは、用意する5種類のなかから適切なものを選んで装着する。
Check(評価)
ユニットの職員で、仮説を立てたケアの時間帯やおむつが合っているかを話し合う。褥瘡委員会でも議論を交わす。
Action(改善)
見直しを行い、適切な時間帯とおむつが定まったら、排せつ情報を記載した紙に一覧化し、ユニットで共有。それにもとづいたケアに取り組む。研修によってもスキルを高める。
入所者のベッドに設置されたヘルプパッド
ステーションにあるパソコンに排せつの知らせが届く
鈴木さんが講師となって排せつケアの研修会
今回お話を聞いた団体
社会福祉法人八千代美香会 船橋市特別養護老人ホーム 朋松苑
千葉県船橋市西船2-21-12
047-410-0117
https://www.bikou.net/hsn/hsn.html