第2回 医療介護をささえる人たち

第2回 医療介護をささえる人たち

介護・医療分野でいきいきと働く人をご紹介します。

高齢者が抱える悩みを5分100円で解決

電球交換や瓶の蓋開け、家具の組み立てといった、日々生じるちょっとした作業。若いときには難なくできていたことも、年を重ねると誰かの手を借りなければ難しくなってきます。そんな困りごとを5分100円からの家事代行として解決してくれるのが株式会社御用聞きのサービスです。
「『こんなこと頼んでいいの?』と思うような些細な手助けから、病院の付き添いといったライフラインに関わるものまで幅広いご要望があります。基本的に一度はお話しをしっかりとお聞きするスタンスです」とサービスの創始者で代表取締役の古市盛久さんは説明します。
5分300円、30分2000円で風呂掃除やパソコンサポートなどを手伝う便利屋サービスも設定しており、なかには車いすユーザーからの依頼を受け映画館で一緒に映画を鑑賞することもあれば、サプライズで家族のためにテーマパークのプレミアムチケットを入手するといった、その人の生活に彩りを与えるような案件もあるといいます。「福祉の言葉がわかる便利屋さん」として、地域住民だけでなく福祉従事者からも信頼を得ています。
サービスの担い手は9割以上が大学生の有償ボランティアですが、1時間1100円以上の報酬はしっかり担保。依頼がくれば、相談内容やタイミングに応じた担い手をマッチングし、現場に派遣する仕組みです。
コロナ禍では、高齢者のみならず、うつ病を発症した20代の若者やシングルマザーなど、多世代からの依頼も増加しているといいます。

会話で寄り添い地域と共に課題を解決

御用聞き事業を開始したのは2010年。幼いころから憧れていた”人のためになる仕事"がしたくて始めた買い物代行サービスでしたが、思い描いていたように事業はまわらず、夢は瞬く間に打ち砕かれました。どん底の最中に出会ったのが、誰かのちょっとした困りごとを解決する昔の御用聞きのようなニーズ。そこから5分100円で請け負う家事代行の事業モデルが確立されていきました。
古市さんがサービスを通じて目指すのは、社会課題の解決です。「私たちの事業は家事代行業で売り上げを伸ばすのではなく、社会課題の解決や地域のつながりづくりを最優先に取り組むソーシャルビジネスと捉えています。課題解決によって収益を生み出し、それをまた社会課題解決のために使う。このサイクルを回し続けることが使命だと感じています」
そのため依頼内容によっては、地域のNPO法人やボランティアグループにつなぐケースもあり、それでも解決を図れなければ同社が請け負うといった態度を貫きます。「市場で顧客を奪い合う気は毛頭ありません。それよりも地域の中に重層的な支援体制があるほうが大事です。各団体と協力して課題を解決していきたいと考えています」
サービスを提供するうえで何より大事にしているのは、依頼者と交わす温かな会話です。依頼の背景には何があるのか、依頼者は何を大事に人生を歩んできたのか。想像もつかないような思いやエピソードに触れ、依頼者と担い手が涙を流し合う場面も少なくないといいます。
「担い手の学生にとっては社会を知る貴重な機会になっていると思います。ここでの経験が、これからの彼らの人生にとって力となり、社会をけん引する人材になっていってくれれば」

第5のインフラとして全国各地に普及したい

2022年9月からは、もっと地域の理解を深めたいと「小さな街づくり」とコンセプトを掲げた地域支援活動も開始。無償で学生と一緒に無料で新聞回収やスマホ教室を開催するなど、活動の幅を広げています。
目下の課題は、御用聞きの事業を全国各地でインフラサービスとして確立すること。
「御用聞きサービスを、日本の8割の場所において電気、水道、ガス、通信に続く第5のインフラサービスとして浸透させたい。25年12月を目標に取り組んでいきます」

古市さんに聞きたい!

Q 医療福祉従事者でも利用できますか?

A もちろん大歓迎です

ケアマネジャーさんからのご依頼は年々増えています。介護保険サービスを利用するまでの利用者さんの生活環境改善や、趣味をもっと楽しめる後押しなど、公的な資金は使いづらいような部分をサポートしています。
「施設内御用聞き」と称して、高齢者施設の利用者さんの買い物代行やレクリエーションほか、設備の清掃など、ちょっとの隙間を埋めるお手伝いもしています。

古市 盛久さん

今回お話を聞いた方

古市 盛久さん

株式会社御用聞き 代表取締役

地域のちょっとした困りごと=「御用」を承ります!

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