第七回 障害者の自立が高齢者の生き方を変える
障害への配慮や支援が全ての人のためになる
障害や年齢でやりたいことを諦めない社会
人口の約29%に目を向ける
日本は高齢者人口の割合が世界で最も多い国です。
総人口数が減少している一方で、65歳以上の人口は3640万人と過去最多です。総人口に占める割合は29.1%にもなります。第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35.3%になると見込まれています。
人口の約7%に目を向ける
一方、障害者の人口は936.6万人です。総人口に占める割合は、人口の約7.4%に相当します。障害の認定を受けていない方やグレーゾーンの方を除いた数です。こちらも、増加傾向にあります。
障害や年齢を理由に諦めなくて良い社会
私は小学生の頃から、障害を抱えて生まれた境遇を活かし、将来は当事者の気持ちがわかる支援者になりたいと思っていました。その夢を叶えるためにも福祉のことをもっと知っておくべきだと思い、高校生の頃、訪問介護員の資格を取得しました。ご自宅やグループホーム等で、利用者の皆様と接する中で、障害が理由で不自由さを抱えていることと、高齢者になって体の自由がきかなくなり不自由さを感じていることに、大きな違いはないと感じていました。(もちろん、受容における心理的な部分において、それぞれに傾向があります。)
時は流れ、特別支援学校の教員として支援する立場を経て、障害への理解を啓発する立場となり、「障害者の自立が可能な社会は、高齢者にとっても年齢を理由に仕事や余暇活動を諦めることなく人生を過ごすことができる社会である」ことに気が付きました。
障害者の自立が高齢者の生き方を変える
気付きのきっかけは、障害があり身体を自由に動かすことができない知人の存在でした。大抵の方は、身体が動かないと何もできないと思う方が多いのではないでしょうか。しかし、車いすの上や寝た状態で、一人暮らしをしながら事業を展開して収入を得たり、社会貢献をしたり、芸術作品を生み出したりしている知人が何人もいます。
高齢者になって杖や車いすを使うようになったり、寝て過ごすことが多くなったりしたことで「美容室やショッピングに出かける頻度が減った。」「今まで続けてきた仕事や趣味をやめた。」など、諦めたことはありませんか?また、そういった家族はいませんか?
障害があっても公共交通機関や施設、お店等を利用できるようになったり、働くことができるようになったりする社会が当たり前になれば、年齢を理由に不自由さを抱えている高齢者も、今まで続けてきたことを諦めずに済んだり、新しいことに挑戦したりすることができる選択肢が増えます。障害者の自立可能な社会への取り組みや世の中の配慮が、高齢者の生き方にも良い影響をもたらすことができます。その視点を高齢者自身にも伝えていく必要性を感じ、啓発の一つとして発信していきたいです。
高齢者と障害者は、約5000万人となり、人口の約36.5%に相当します。その家族を含めると、障害に関係がある方は、それ以上になります。また、自分が将来、高齢者になることを想定すると、関りのない人は誰一人居ません。
高齢者世代への啓発の様子
動画で配信する目的
障害への理解(心のバリアフリー)が進むと、高齢者や様々な事情を抱えている方たちへの理解も進むと言われています。しかし、障害について知る機会が不足していると、心のバリアフリー化は進みません。そこで、誰もが手軽に知ることができる、動画での配信にも力を入れています。
YouTubeのチャンネル名『梢の心になるほど隊』は、障害について自然と詳しくなれる動画を楽しくポップな内容で投稿しています。動画投稿以外にも、ライブ配信でマイノリティについて視聴者の経験談をご紹介したり、考えをシェアして交流をしたりする取り組みも展開しています。
TikTok『こずえ@ピンぼけ0.09Maxライフ』は、主に私の視覚障害あるあるの動画を投稿しています。他障害の当事者のあるあるも募集し、生の声を投稿しています。ぜひ、ご視聴ください。 ※TikTokで『こずえ』と入力して検索するとご覧になれます
今回お話を聞いた方
杉本 梢さん
Lululima branch代表
ルールリマブランチは、正しく障がいを知る機会をあらゆるスタイルでご用意しております。HPはこちら:https://lululima-branch.com/