医療・福祉のネットワーク探訪記 ~マチツナガルラボ編~
支える側も共に成長する困難を抱える人の居場所づくり
業種や立場を超えて活動するプロジェクト
2021年4月から活動する、社会的処方実践プロジェクト「やまはなコタン(越境×余白)」。このプロジェクトが掲げる目標は、医療・介護に携わる専門職がつながり、不登校児や介護保険サービスを利用していない高齢者、生活困窮者といった困難を抱える地域住民の居場所と、支援する側も共に成長する場の創出です。ファミリークリニックさっぽろ山鼻が主宰し、医師や薬剤師、歯科衛生士、ケアマネジャー、保健師など、10数人の職種が実行委員を務め、運営しています。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、 一 般診療だけではカバーしきれない地域課題が増えていることに問題意識を強めた同院が有志に呼びかけ、始動しました。支える側となる専門職のメンバーは紹介を通じて輪が広がり、現在50人ほどが会員となっています。
「コタンとはアイヌ語で集落を意味します。業種や立場を超えてみんなで企画し、活動していくことを大事にしています」と同院の薬剤師で、プロジェクトの運営を担当する深堀泰弘さんは説明します。
21年の活動は、支える側のつながりに力を注ぎ、主にオンラインを通じた多彩な活動に取り組みました。専用のFacebookページには、オンラインによる朝礼や読書会、在宅医療の知識を養う勉強会などのメニューが設けられ、会員は興味のあるプログラムに自由に参加できる仕組み。ほかにも、介護予防につながる運動を考案し、各地でメンバーが出前授業をする活動も行っています。
気軽に立ち寄れるテラスで小さな悩みを拾い上げる
今年6月、新たな活動拠点として、同院斜め向かいの空き店舗を活用した「山鼻てらす」が誕生しました。住民が健康や生活のことなど困りごとを相談できる「暮らしの保健室」として、あるいは子どもたちが読書や勉強の場などに活用するなど、社会的弱者の支援につなげることをめざしています。名前には、休息や飲食の場である「テラス」、明るい陽の光があたる「照らす」、”教えて“を意味する「Tell Us」の3つの意味が込められています。「ふらっと立ち寄り、他愛のない話ができる場になってほしい」(深堀さん)
プロジェクト発足から1年が過ぎ、地域住民に向けた活動も充実し始め、支える側、支えられる側双方において賛同者が増え続けています。深堀さんは今後について次のように話します。「近隣のお店や住民の方々にも当プロジェクトの取り組みが少しずつ浸透していっています。今後も山鼻てらすを拠点に住民と交流を図りながら、小さな悩みから拾い上げていく活動をしていきたいですね」
やまはなコタン」(越境×余白)が掲げるビジョン
・職種、事業所の垣根を越えた地域創成ネットワークができる
・地域の社会資源がコラボレーションにより大きな資源へと変化する
・制度の隙間にいる人たちへの支援ができる
・医療、福祉、行政が連携した相互扶助のコミュニティづくり
・総合相談窓口の役割・家庭医療を提供する
やまはなコタンの多彩な活動メニュー
山鼻てらすカフェ
毎週火曜日の14時から、山鼻てらすの駐車場で催されるカフェ。コーヒー片手に、医師や看護師などと気軽におしゃべりができる。腰を落ち着けて相談をしたい場合は、室内で話を聞く。
オンライン朝礼
毎日、希望する会員メンバーとオンラインをつなぎ、体操と1分間スピーチを実施。「運動の習慣が付き、ジムに通うようになった会員もいます(笑)」(深堀さん)
オンライン読書会
設定された課題図書をその場で読み、感想を交わす集まり。普段は手に取らないようなジャンルの本を読む機会にもなり、人間力が養われる。
アイスキャンドル
今年の2月に、地域の予防センターと 一 緒に、手作りのアイスキャンドルで町を彩る取り組みも行った。
運動教室
札幌市厚別区にあるホクノースーパーに設けられた「健康ステーション」で、住民に運動教室を行っている。
教えて〇〇先生!
支える側に向けたオンライン勉強会。これまで、認定HIV感染症看護師やケアマネジャーなど、さまざまな場所で活躍する人を講師に迎えた。勉強の後は、各自飲み物を手にゆるりと交流会も行う。
今回お話を聞いた団体
ファミリークリニックさっぽろ山鼻
「やまはなコタン」の活動に興味のある方は、担当の深堀さんに連絡するか、毎週火曜日に開催されている山鼻てらすカフェにご参加ください!
幌市中央区南21条西9丁目2-15 ラーピス南21条ビル1F
011-211-0336
https://kate-tane.localinfo.jp