働くひと 私の街のカイゴの『わ』

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あるがままを大切に幸せを感じるサポートをしたい

小休止を経て在宅に興味が再燃困難事例を扱う診療所を開院

空に浮かぶ雲がのんびり気ままにながれるように、どんな環境でも”あるがまま”でいられるようサポートする││。これが、浮き雲在宅クリニックの名前に込められた思いです。受診拒否や生活困窮者といった医療・介護制度の網からこぼれ落ちてしまう人を主な対象とした診療所として、2021年8月に開院しました。
工藤毅院長は、道外の大学を卒業後、年間1000件を超える手術を行う総合病院で消化器外科医として勤務。救急医療にも携わり、多忙な日々を送っていましたが、今から4年前に故郷となる札幌にUターンしました。 一 時は、同級生が経営するベンチャー企業に就職するも、再び医師として働きはじめ、次第に在宅医療に面白さを見出します。
「大学時代には在宅医療の臨床実習の経験もあり、もともと興味はありました。そのときの面白さが再燃し、開業に意識が傾いていきました」と工藤院長。当時、同僚だった医療ソーシャルワーカーの小柄華奈江さんを誘い、事務職員を含めた3人で開業にいたりました。現在は、看護師もメンバーの 一 員となり、病院や地域包括支援センターなどから、末期がんの患者さんを多く受け入れています。大事にしているのは、患者や家族との綿密な調整と情報共有です。
小柄さんは、「特に困難事例に携わるなかで、かかり付け病院もなく、病院受診を拒否する患者さんは 一 定数存在します。そういう方でも訪問診療なら受け入れてくれることもあるため、困っていることを 一 つずつ解決し、適切な医療につなぐようにしています」と説明します。
情報共有を重視するのは、医療者間との連携についても同様です。「自分自身が病院で働いていたときに、退院後の患者さんの様子をもっと知りたいと感じていました。できる限り詳細かつ迅速なフィードバックを意識しています」と工藤院長は話します。

工藤さん

今回お話を聞いた方

工藤 毅 さん

院長

小柄さん

今回お話を聞いた方

小柄 華奈江 さん

相談員

初の患者は面会拒否地域で見守る体制づくりに苦心

これまで支援したなかで印象的だったのは、カルテナンバー1号となった末期がんを患う独居男性の事例でした。診断を受けて以降、受診を拒むようになった男性について、支援を託された同院。しかし、男性は面会も拒否し、自宅のドアすら開けてくれない状況が続きました。工藤院長と小柄さんは根気よく訪問し、警察や消防、住宅の貸主にも協力を募りました。そうした懸命さに男性は心をほぐしたのか、しばらくしてようやく訪問診療がスタート。2か月後には、本人の希望通り自宅で最期を迎えることができたそうです。  「次第にご本人も慣れて、あれやこれやと買い物まで頼まれるような関係性になりました(笑)。最期はご本人が納得いく形で看取ることでき、少しは助けになったかと思っています。まさにクリニックの使命を体現できた支援だったと思っています」と工藤院長は振り返ります。今後について、2人は次のように抱負を語ります。
「医療的な社会資源の情報が行き渡っていない方は多くいます。病院のソーシャルワーカーさんにも、在宅医療の現状を発信し、地域で患者さんを見守る体制をつくることができれば。少しでも前向きな感情を引き出せたらうれしいですね」(小柄さん)
「困難事例が集まる地域包括支援センターからの依頼には出来る限り応えていきたい。顔の見える関係性を大事に、関わる人たちがハッピーになれる診療所をめざします」(工藤院長)

浮き雲在宅クリニックに聞く!在宅医療のQ&A

Q 院当日あるいは依頼当日に訪問診療に来てもらうことは可能ですか?

A 院の場合は、迅速性を重視していることからもちろん可能です。医師とソーシャルワーカーで、ご本人はもちろんご家族の要望や不安をじっくり聞き取り、サポートします。

Q どんな医療行為ができますか?

A CTやMRIといった大きな機器を用いる検査以外は、ほぼ可能です。エコーや吸引機、シリンジポンプ、ポータブルトイレのほか、簡易的な外科処置ができるグッズもあります。

今回お話を聞いた団体

浮き雲在宅クリニック

札幌市東区北12条東15丁目3-10法邑ビル2階
011-299-3620

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