第五回 スポカルで障害への理解を広めるきっかけ作り

第五回 スポカルで障害への理解を広めるきっかけ作り

親子で障害に触れる機会を!
楽しみながら視覚障害を知る

障害に触れるきっかけ作り

子どものころ、障害について知る機会はどのくらいありましたか?もしかしたら、大人になった現在も障害について考える場面がなかったと感じている方も少なく無いはずです。親の障害への理解の程度は、子どもの理解度合いにも影響を与えるという研究結果があります。昨今、学校教育に「障害理解教育」が導入されはじめていますが、全国で統一された学びは「今後に期待!」という現状です。そういった背景もあり、親子で障害を知る機会の大切さを感じ、地域のイベントなどで障害を知らせる活動をしてきました。
今回、ご縁があり数万人が来場する大きなイベントスポーツ&カルチャー体験フェスティバル「スポカル2022」に参加することにしました。短時間で印象に残りやすい疑似体験と、どの年齢層でも楽しめるボウリングを掛け合わせた内容にしました。

過去の啓発経験から学んだことを活かして

今まで参加したイベントで、「障害」に関する催しのみで注目を集める難しさを目の当たりにしてきました。
障害に対してネガティブなイメージをもっている方や障害を身近に感じられずにいる方にとって、きっかけがなければ自ら積極的に触れようとなかなか思えません。
そこで、同じブース内で「フットサルビリヤード」というコーナーを併設しました。その効果もあり、視覚障害の疑似体験をした方に手渡す100名分のお手紙(視覚障害のことがさらに分かる情報が書かれたもの)が、開始2時間でなくなりました。今回、スポカルの会場に、4万人が訪れたそうです。私たちの体験ブースも、10時から16時半まで人の流れが途切れることはありませんでした。

視覚障害の疑似体験

さらに、「視覚障害」の疑似体験をボウリングゲームに盛り込むことで、参加しやすい雰囲気を演出しました。全盲の状況を作り出すアイマスクと弱視の視野が狭い見え方を模したメガネ(細いストローの穴から覗いたような見え方)を用意しました。
また、ボールを転がす時に体の方向を確かめられるよう、触ってわかるラインを設置しました。10本のピンに鈴を付け、倒れたら音が鳴るようにしました。ピンの奥で手拍子と声で方向を伝え、視覚がいつものように活用できなくても音で判断できるようにしました。

子どもたちの反応

ピンを倒すチャンスは2回。1投目は、アイマスクをして真っ暗な中、ボールを転がします。視覚が遮られた状態ではピンの方向もボールの位置もわからず、見えていたときと比べると動きが一気に減ります。状況の説明と、手を叩く音を聴くことを伝えると、すぐさまボールを投げる体制に自然と体が動き出します。情報が得られたことで、どうしたらよいのか考えて動けるようになります。アイマスクを外したときに、やっと自分が何本倒せたのか結果を知って喜んだり悔しい気持ちになったりしていました。
2投目は、もっとピンを倒したい気持ちと、狭い視野からなんとか情報をキャッチしようと顔を動かして見ようとする様子(スキャニング)が多く見られました。「いつもの自分の見え方と比べて広さはどう?」という言葉がけに「いつもより狭くて見えない」など、普段の自分と比べて感想を伝えてくれました。「やっぱりピンの位置がわかる手拍子はあったほうが良いよね?」という確認のやり取りをして、最後のボールを転がします。隣で見ている家族も、「どんな風に見えるの?」など興味津々です。1投目よりもじっくり音を聴いていました。
最後に、メガネを外す前に「さっきのように全く見えない人や、今のように少しは見える人もいることを覚えておいてほしいです。」と伝えると、大きくうなずいてくれました。

発達段階に応じた啓発

学校や企業、地域、医療など、様々な場面で啓発をしてきました。伝える上で、日本の国民性や障害の歴史、聴講者のニーズや障害への理解の状況をいつも念頭に、伝える内容を検討しています。今回は、特に幼児から児童が多かったため、発達状況に応じた言葉がけが重要でした。
幼児期は「障害の存在に気づく」最初の段階です。児童であれば学年によって「正しい知識を得る」時期の子どももいます。説明しながら反応によって、視覚障害という言葉を使うかからはじまり、どこまで知らせるべきかまで、話す内容を変えながら伝えました。
もしかしたら、目の前の人にとってこれが障害に触れる最後のチャンスになるかもしれないと思いながら、いつも発信しています。なぜなら、日本では全員が等しく知る機会が用意されていないからです。だからこそ、多くの親子が障害に触れる機会に関われたことが大変うれしいです。今後、障害がある方を見かけたり関わったりするときに、今日の体験がさらに心の中で広がっていってほしいと願っています。

動画でも魅力を配信

チャンネル名『梢の心になるほど隊』
障害に関する「なるほど」を、YouTubeやTikTokの動画で配信しています。ぜひ、ご視聴ください。

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杉本 梢さん

今回お話を聞いた方

杉本 梢さん

Lululima branch代表

ルールリマブランチは、正しく障がいを知る機会をあらゆるスタイルでご用意しております。HPはこちら:https://lululima-branch.com/

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