働くひと 私の街のカイゴの『わ』

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前向きさとチーム力で地域に元気を届けるクリニック

コロナ対応でチーム力を発揮

ーコロナ禍では、クラスターが起こった施設への支援をはじめ、在宅で療養する陽性患者への訪問診療、ワクチンの職域接種など、みなさん最前線で活動されていました。このコロナ禍での対応と振り返りをお願いします。
中川 コロナ対応に追われながらも、当然クリニックの核となる診療は手が抜けませんから、怒涛のように過ぎた日々でした。今は感染拡大もようやく少しひと段落ついたかなと感じています。ただ一方で、これから冬にかけてはインフルエンザの流行もありますから、感染に翻弄されている状況は変わりません。
荒関 患者さんにとっては、コロナ禍で病院に行くことすら不安を覚える方も多くいらっしゃいました。そのため、当クリニックでも発熱外来を設けて時間で区切るなど、定期受診される患者さんが、不安なくいつも通りに通えるクリニックであるようみんなで工夫して取り組みました。コロナワクチン接種の患者さんの動線もしっかり独立させ、効率良く、多くの方が接種できるよう整備しました。
山﨑 ハード面だけでなく精神面も、コロナに対して必要以上にネガティブなイメージを持たないようには意識していましたね。中川院長の力強い掛け声とともに、みんなで後ろ向きにだけはならないように気を付けました。
荒関 みんなで知恵を絞って、声をかけあって、乗り切ったよね。
中川 当院はコロナ以前から、患者さんや連携先も含めて良い関係性を築くためには、院内のスタッフ同士が支えあうことが大事だと考え、クリニックを運営してきました。こんな過酷な状況下だからこそ、そのチーム力が発揮されたと思っています。あらためてチームが好きだと見直す機会にもなりましたね。
小林 私は医療ソーシャルワーカーだから、ワクチン接種や電話対応など直接的な支援はできておらず、歯がゆく思うこともありました。でも先日、福祉協力員として参加させていただいてる町内会の集まりで、ワクチン接種の予約ができなくて困っている住民の方に、別の住民の方が当クリニックを紹介してくださって、無事接種につながったと感謝されたことがありました。当クリニックは大勢の人がワクチンを打てるよう間口を広げて対応していたので、お役に立てたことがうれしかったです。
中川 僕らは家庭医療を提供する使命があるので、積極的に対象者のいる場所に出向いて働きかける、言わばアウトリーチはとても重視しています。当クリニックの患者さんの診療をするだけではなく、社会的資源を処方して提供していく環境づくりです。
荒関 「地域コミュニティケア」とも言いますが、地域全体をどう元気にしていくかを考える役割ですね。

山下さん

今回お話を聞いた方

右から

中川 貴史さん

院長

小林 総子さん

医療ソーシャルワーカー

山﨑 礼子さん

看護師長

荒関 美和さん

事務長兼診療放射線技師

積極的に地域に出て患者の幸せを支援する

ーそうした地域活動の必要性は認識しながらも、通常業務に追われてなかなか地域活動に踏み出せない・・・・・・なんて声も聞きます。
山﨑 もちろん、それぞれの職種でやらなくてはならない日常業務は山とあるのですが、先ほどのエピソードのように、地域にはあらゆるところに困っている方がいます。時間をつくって地域に出てみて、少しでも自分たちが地域のなかで助けになることができれば、自然と必要性を感じられるのかなと思います。
中川 組織の文化をつくることも大事だよね。福祉協力員として活動しているなかで、ある男性の高齢者が自宅で足をくじいて動けないという連絡が総子(小林さん)に入ったんです。それを聞いた総子は、自ら車いすを持って訪問して、その男性を連れて帰ってきました。手の空いていたスタッフがエコーを取ったところ骨折しているとわかり、整形の病院を紹介しました。結果的に当クリニックの患者さんにはならなかったのですが、それでもいいんです。適切な判断とケアをして次につないだということが重要。こういう文化をみんなで作っていこうと、毎日話しています。
ーまさに地域課題をスタッフ一丸となって解決していることがわかります。
中川 そういう意味では、専門職が自分の専門分野の仕事をするのは当たり前という感覚があります。地域課題に対応するには、医師、看護師、医療ソーシャルワーカーとしてだけではなく、職種という括りを取っ払った状態で、相手に対して良いケアとは何であるか考えることができるかどうかが求められていると思います。
山﨑 難しいけれど、その分やりがいも大きいです。私は、当クリニックの前職は急性期病院で働いていて病気を治すことに専念していたため、なかなか患者さんの退院後の生活やご家族との関係性までは意識が向きませんでした。でもこうやって、今、訪問診療などを通じて生活を見させていただいたり、ご家族と関わることで、患者さんやご家族が望む幸せを直に感じられていて、これも1つの医療のあり方だなあと日々実感しています。

過酷な状況でもユーモアがあれば大丈夫

ー今後の連携のあり方は 小林 コロナ禍では、どうしても電話だけのやり取りになってしまいがちでしたが、また以前のように当クリニックでカンファレンスを開催するなどして、関係機関同士、足並みをそろえられればと期待しています。
あとは、勉強会などでコロナに対する正しい知識も共有して、一緒に意識を高めていきたいですね。コロナ禍で外出機会やリハビリ機会がなくなって、廃用症候群に陥っている高齢者の方もたくさんいるはずなので、適切な感染対策を講じながらも意欲的に取り組みたいですね。
中川 医師という立場から言うと、どうしても職種上、組織の上に立ってモノを言う立場になりがちです。でもそれだと、せっかくの多様な意見をシャットアウトしてしまう危険性があることを自覚しています。そうではなくて、やはり1人の患者さんをケアするチームとして、互いを尊重しあい、きちんと感謝を言葉に出して伝えあうよう心がけています。医師1人だけでは、クリニック1つだけではできることは何一つないですから。
ー大変な状況下ながら、みなさんのポジティブな空気はどこから来るのでしょうか?
中川 やっぱりどんなときもユーモアは忘れずにいたいと思っています。うちは、山﨑というユーモア大臣がいますから。
山﨑 小林副大臣もいます(笑)
全員 笑
中川 コロナの渦中にいるときも、山﨑が面白いことを言って、荒関がハハハと笑って、総子がボソボソと突っ込みを入れるみたいな構図ができあがっています(笑)

今回お話を聞いた団体

医療法人 北海道家庭医療学センター 栄町ファミリークリニック

(代 表)011-723-8633

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