介護ライター田口はミタ!介護現場のひそひそ話

介護ライター田口はミタ!介護現場のひそひそ話

第二十九
支援学級に進学した息子
調理師になりたいという夢を胸に小学校卒業

 発達障害で支援学級に入学した息子が、昨日、小学校を卒業した。特に、支援学級の子どもたちの親は号泣している人が多かった。筆者も6年前は、こんなに立派に育つなんて想像ができなかったので、みんな同じような気持ちだったのだろう。
発達障害のある子どもが小学校段階で受けられる支援は、左記の3つに分けられる。
①支援学級(特別支援学級)
少人数制で、個別の学習や生活スキルをサポート。通常学校内に設置。
②通級(通級指導教室)
通常学級に在籍しつつ、週数時間、専門指導で支援を受ける。
③特別支援学校
重度の障害がある子向け。個別対応の教育や医療的ケアを提供し、自立を目指す。
※学校や地域で対応が異なる。具体的な情報は学校や教育委員会に確認を。
 筆者の住むエリアでは教員不足で、通級学級はなく、軽度発達障害の息子は、普通学級か支援学級の2択だった。
 息子は、元から、自閉傾向よりも多動傾向が強く、コミュニケーションに難がないタイプだった。とはいえ、「愛されキャラ」「癒し系」として、卒業式ではみんなから写真を求められる息子の姿に正直、驚いた。なぜそんな風に育ったのか、成人期の当事者取材も交えて振り返る。

過干渉系親と放置系親ならどっちがいいか?

 成人当事者が親への感謝として語るのは、圧倒的に「おおらかに放置してくれた親のエピソード」だ。過干渉系親はどちらかというと「毒親」エピソードとして語られる。「不登校になった自分に学校を強制しなかった」などは、よく親への感謝として語られる。発達障害(自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDなど)がある人は、感覚過敏、社会的相互作用の困難、衝動性、集中力の持続困難など、独自の課題を抱える。これらの特性から、自分のペースや方法で物事を処理する「自己調整」が重要になる。
 「おおらかな放置」で親が過度に介入せず、子どもが自分のタイミングや方法で試行錯誤する空間を与えると、当事者は自分の特性に合った対処法を見つけやすくなる。この「自由度」が、自己理解や自己肯定感の構築に繋がり、後から感謝の対象となる可能性があるのだろう。
 一方、「過干渉な親」は、子どもの行動を細かく管理したり、「正しい」方法を押し付けたりしがちだ。発達障害者にとって、これは自分の特性を否定された感覚や、無力感を生むことがあり、「毒親」としてネガティブに記憶されやすいのだろう。どれくらいの放置度だったかといえば、家以外での行動は、全て支援者さんや学校頼りくらいだった。

普通学級と支援学級のどちらが良かったか?

 普通学級と支援学級進学で悩んだ末に、支援学級を選んだ親御さんも多いだろう。そして、支援学級を選んでよかったのか?とまだ葛藤するシーズンだと思うが、筆者は胸を張って、「支援学級に進学して良かった」と言える。
 発達障害児は、健常児が難なく身に着く生活習慣が、身に付きにくい。支援学級では、洋服の裏表から、食事のマナーまで、日常生活で必要なことは全て教えてくれた。その分、学習面では遅れたが、生きていく上で毎日することを覚えることの優先度が高いのは言うまでもない。
 支援学級の先生に取材すると「普通学級から支援学級に転籍してくる子は、普通学級でついていけずに、授業に参加しないことを覚えているから、支援が大変になる」と言うほど、合わない環境での「無理」は子どもに悪影響だ。学習面だけで普通学級を選ぶのならば、支援学級を選んで欲しい。

ケース会議の大切さ

 いまだにSNSでケース会議の話題を書くと、「そんなものを開催したことがない」という声が多いケース会議だが、そんな方にこそ知って欲しい。障害福祉のケース会議とは、障害のある方の支援を効果的に行うために、関係者が集まって情報共有や支援計画を話し合う会議だ。我が家では、家族、支援者(相談支援専門員、福祉専門職、学校関係者など)、行政の担当者が集まって、定期的に障害のある子の生活を支えるためのチームワークを固める場を開催していた。
 卒業式で「中学校では家庭科部に入り料理をふるまいたい」と言った息子だが、これも「得意を引き出す」という共通の目標に向かって、一丸となり動いた結果だ。
 ケース会議は、家族でも行政でも主催できる。一般的には、相談支援専門員が中心となり開催するが、相談支援員の人で不足も深刻なので、自主開催も手としてはある。
 高齢者介護同様、障害児の育児も親だけが背負うものではないと思えた6年間だった。中学校ではまた違う悩み事が出てくると思うが、我が家は引き続き支援学級に進学が決まった。卒入学のシーズンだが、後悔のない進路を選びたい。

今回お話を聞いた方

田口 ゆうさん

あいである広場編集長兼ライター

東京都出身東京都在住。立教大学経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアや日刊SPA!や集英社オンラインなどで連載を持つ。認知症患者のリアルを描いたコミックエッセイ『認知症が見る世界』で原作担当

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