第10回 医療介護をささえる人たち

第10回 医療をささえる人たち ~介護現場で共感を呼ぶ「動き出しは本人から」~

介護・医療分野でいきいきと働く人をご紹介します。

特別なことと考えず気付きを得ることから

動き出しは本人からー。介護現場で働いていれば、このフレーズを一度は耳にした人も多いのではないでしょうか。介護現場において、利用者の「動き出し」を尊重した適切な支援を呼びかける技術・考え方であり、作業療法士でデイサービス代表の大堀具視さんが提唱しています。今や介護老人保健施設や特別養護老人ホームといった施設ほか職能団体や各施設の研修などを通じ、多くの介護現場においてあるべき介護の方法として取り入れられています。
大堀さんが、この考え方たどり着いたのは、病院のセラピストを経て勤めた専門学校の教員時代のこと。はじめは、医療現場でリハビリ技術を学ぶ若い世代に対する教育の一環として見出したものでした。それが、たまたま特別養護老人ホームで職員研修を行ったときに、高齢者支援の場こそ必要であると認識し、それから地道に広まっていったそうです。
「介護分野には素晴らしい理念がたくさんありますが、それが現場での実践と乖離し、机上のものに留まっているのでは意味がないと思います。やはり今、困っていることを解決に導くためには、ダイレクトに現場から変えていく必要があり、それが共感を呼んだのといます」と振り返ります。
しかしながら、このコンセプト自体については特別なものでも独自のものでもないと大堀さんは言います。「私自身、福祉に携わる素晴らしい人たちと出会って、影響を受けたことを言語化しただけです」
現場で実践するうえで大切なことは、利用者の思いに気付くこと、そして意識の転換にあると説明します。「利用者さん主体は当たり前のことですし、ケアする皆さんも頭ではわかっているはず。でも忙しさに捉われて業務ありきになり、いつのまにか主体がケアする側になってしまったり、利用者主体がかなわない環境を招いてしまっているのだと思います。そもそも介護が必要な人というのは、動作ひとつとっても私たちより時間を要するのは当然です。時間の流れが違うことに気付き、”動きを待つ”という認識からあらためる必要があるのかもしれません」

デイサービスを拠点に理念を伝えていきたい

しばらく指導者として活動してきた大堀さんですが、四月からはじめて独立開業の道を選び、デイサービスを札幌市内に開設しました。「自分の言葉に責任を持つには、現場を持たなければ説得力がないのではとの思いがずっとありました」
やはり、デイサービスのコンセプトは「動き出しは本人から」を掲げます。スタッフのほとんどが教え子や同僚であり、この理念に賛同し、実践してきた背景があります。そのため近いうちに、デイサービス事業に加えて研修事業や執筆といった啓発事業も、スタッフ一丸となって展開していきたいと考えています。
とはいえ、今は事業所の存在を知ってもらうことが最優先。「”動き出しは本人から”の理念を事業のなかでどう展開していくことができるかは未知数ですし、楽しみでもあります。そもそも経営も素人。地域に認められるような成果を上げられる事業所に成長させていきたいですね」と展望を語ります。

大堀さんに聞きたい!

Q “動き出しは本人から”は高齢者支援だけで活用できる考え方なのですか。

A 対象は高齢者だけに限りません。

介護度も関係なければ、障がい者、健常者、年齢の区別も関係ありません。たとえば子育てにも親和性が高いと思います。過保護にすればするほど子供は依存するし、親も心配が募る。リスクを回避しているつもりが過保護になって、それが子ども自身の恐怖を生んで身動きが取れなくなってしまいます。介護の理論と同じです。
全ての人間関係において、活用できる考え方だと思います。

大堀 具視ささん

今回お話を聞いた方

大堀 具視さん

デイサービスRe_Start 代表取締役

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