ケアの質を高める!PDCA推進術

ケアの質を高める!PDCA推進術

情報共有を密に行いチームで前向きに取り組む
科学的介護が推進されるなか、あらためて問われるのがケアの質向上をめざすPDCAサイクルの回し方。今回は、看取り支援について特別養護老人ホームゆとりえの事例から、そのあり方を考えます。

フローチャートとケアの一覧化で質を向上

「看取り支援には、職員全員で前向きに取り組んでいます」と話すのは、特別養護老人ホームゆとりえの介護主任を務める吉田桐菜さんです。その要因は、職員間の綿密な情報共有にあります。
2019年頃から看取り支援の整備を進めてきた同施設。それまでも抵抗感なく取り組んできたものの、一部担当者のさじ加減に任せている側面があったことから標準化には課題を感じていたといいます。そこで、新人職員でも適切な対応が行えるよう着手したのがフローチャートの作成です(左ページ図1)
これができたことで全職員共通の対応ができるようになりました。新人教育の際も、教える側は説明しやすく、教えられる側も全容が把握しやすくなったといいます。
次に現場レベルでの情報共有として、ケアプランや介護記録とは別に、その日の入所者の体調に合わせてやっておくべきケアや注意点を記した文書を掲示し、情報も共有しています。「この時間に様子を見ながら顔を拭く、体位交換をするといった必要なケアを一覧化しています」と吉田さん。特に看取りの最終段階では、食事や水分摂取が落ちてきてから一週間くらいで亡くなるパターンが多いことから、いつも以上に小まめな情報共有を行っています。

チームで見守る風土で新人職員の安心感を育てる

そして、同施設が重きを置いているのは、チームが一体となって看取りに取り組む風土づくりです。看取りが近くなった入所者がいれば、各々の職員が隙間時間を見つけて顔を見に行ったり手をさすったり、気にかけています。「職種関わらず、みんなが普段のケアのなかで気にかけることで、ちょっとした変化にも気付くことができています」と吉田さん。
看取り後についてはデスカンファレンスを開催し、自由に感想や課題などを話し、次の支援に活かすとともに、支援する側にとってのグリーフケアの機会にもつなげています。
こうした積み重ねにより、看取り支援といえども、日常のケアの延長線上にあるものといった意識が醸成されてきたと吉田さんは説明します。「人が亡くなるというのは自然なこと。明確な体制は構築したうえで、必要以上に構えずに取り組んでいる先輩職員の姿があるから、新人職員も安心して支援ができているようです」(吉田さん)

吉田さん

今回お話を聞いた方

介護主任 吉田桐菜さん

HECTアプローチの主な項目

Plan(体制の整備)
・図1:看取りのフローチャート。流れをある程度、文章化・マニュアル化している。研修も開催し、フローチャートの確認をはじめ、これまでの看取り支援の経験から支援感や死生観をざっくばらんに話し合うなど、実践的な学びを大事にしている。
・図2:ステージ別のマニュアル(一部割愛)入所から最期までのステージ別の特徴や役割分担もマニュアル化した。

図1:看取りのフローチャート

図2:ステージ別のマニュアル

Do(看取り支援)
・情報共有を綿密に行い、チームで取り組む
・現場レベルで、必要なケアを一覧化して毎日掲示
・心地良い空間づくり

Check(振り返り)
・デスカンファレンスを開催し、職員それぞれが支援について振り返り、思いを吐き出す
・デスカンファレンスに参加できない職員にも、毎回行った支援についてアンケートを聴取する

Action(体制の改善)
・8月には「盆法要」を実施。住職を呼び、ご家族や入所者を招くこともある
・その都度、体制を見直し

今回お話を聞いた方

社会福祉法人武蔵野 特別養護老人ホームゆとりえさん

東京都武蔵野市吉祥寺南町4-25-5
TEL 0422-72-0311 FAX 0422-72-0321 E-mail yutorie@fuku-musashino.or.jp

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) ※ショートステイ(短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護)も併設

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